毎度!GXblog編集部の山佑です。
今回もご好評いただいております(?)シリーズ第3弾となりまして、ジャケット編後半からスラックス、ベスト編へと一気に綴っていきたいと思います。
目次
ジャケット編-2
まずは前回のおさらいとして、下記シートの①~②が終わり、今回は③からとなりますのでよろしくお願いします。
③_体型補正(ジャケット)
オーダーだからこそ、着用される方の体によりフィットさせたいですよね。前回のその2「寸法編」に続き、この体型補正に関しましても寸法を取る方(フィッター)の技術(知識や経験)に依る部分もございますが、非常に大切な部分ですので、各内容毎に簡単に説明させていただきますので、少しでも理解を深め、よりよりスーツ作りにお役に立てればと思います。
まず、人間の体は、先天的にしろ後天的にしろ、それぞれ個性があります。それはサイズ的なことだけでなく、体型的なこともです。それは既製服ではカバーが難しかったり、出来ない部分です。よくある話として、サイズ的には、肩に合わせるとウエストがブカブカだったり、袖が短いんだよねー、だったり。また体型的には(内容は後述しますが)、肩が怒(イカ)っているためになんか背中に変なシワが入るんですよ、脇が当たって窮屈なんだよねー、だったりするわけですね。その”変なシワ”や”窮屈感”を緩和させるのが「体型補正」になります。
こちらは各工場により項目や型紙の動かし方はそれぞれ違いますが、要はそういうことです。
そしてGXを縫製しているジェンツ(詳しくは過去のブログ紳士服オーダー工場 ジェンツを御覧ください)は、数多くの体型補正に対応しております。また、こちらも寸法と同じように、それぞれの内容に”ここまでしか補正できません”という限界が設定されており、その一覧が下記の表になります。
それでは、各項目ごとに説明させていただきますが、本記事は「オーダーシートの記入法」ですので、あくまで簡単な説明とさせていただき、別の機会により深堀った内容で記事を書かせていただければと思います。
・反身:
反り(ソリ)体型の方で、前が吊り上がり、背中が袋状に余りお尻につかえてしまう。
・屈身:
前かがみの体型の方で、前裾が外側に逃げて、背中裾が跳ねてしまう。
・怒肩:
イカリカタ。肩の傾斜が正体(“しょうたい”ではなく”せいたい”です)の方より上がっていて、上衣の釦を留めた時に襟元が浮き、背襟付下(せえりつけした)にツキジワが出てしまう。
・撫肩:
ナデカタ。怒肩とは逆で、肩が下がっている方で、前身にタスキジワ、背中にハの字のシワが出てしまう。
・猫背:
字のごとく、猫の背中のように丸まっている方で、衿が抜けて、センターベントの場合に重なってしまいます。
・突取:
ツキトリ。背襟付下にツキジワが出てしまう。
・鳩胸:
こちらも猫背と同様で、字のごとく鳩のように胸が出ている方で、Vゾーンが浮いて前身の地の目が拝んで(直線ではなくV字)しまう。
・衿ミツ巾:
ミツ巾が広く衿が抜ける場合(はミツ巾をマイナスにする)、ミツ巾が狭くツキが出る場合(こちらは逆にプラスにする)。
・N点(上下):
前丈の過不足。
・N点(左右):
前身襟元がつかえて、タスキジワが出たり、逆に開いたりしてしまう。
・打合:
釦付け部分の前身巾の過不足。
・W脇巾:
脇と背のウエスト線の縫い合わせのゆとりの過不足。
・尻廻り:
脇と背のウエスト線より下の縫い合わせのゆとりの過不足。
・胸巾:
前身頃袖付部分がつかえる(マイナスの補正)か、前に引かれる(プラスの補正)。
・背巾:
背中、袖付部分が余る(マイナスの補正)か、背縫い側に引かれる(プラスの補正)。
・ダキ巾:
脇巾の過不足。
・前グリ:
手が前に出にくい方に。
・ダキ落ち:
背中、袖付部分から袖グリに向かって引かれジワが出てしまう。
・アゴグセ:
撫肩や鎖骨の張っている方によく見られる現象で、襟元が浮いてしまう。
・鎌深:
カマブカ。袖グリの下位部分の深過ぎにより手が上げにくい場合はマイナス(鎌を浅くする)の補正、逆に浅すぎて手がつかえる場合はプラス(鎌を深くする)の補正。
・前肩:
前身頃の肩先部分があたることでタスキジワが出てしまう。
・袖付:
背中袖付部の袖に余りジワや袖を前に出すとねじれジワが出てしまう場合に入れる補正。
・前下り:
マエサガリ。横から見た時に前裾が背裾より上がって見えてしまう。
・腹グセ:
前身頃のウエスト線より下の部分がはねてしまう。
この上記の体型補正に対して、いくつまで(何cmまで)の補正ができますよ、というのが補正内容&限界値表となります。
④_備考欄(ジャケット)
こちらの欄には、②には記載のないオプションや基本仕様外の特殊な指示を記入する場所になります。
こちらはすべて列挙しようとすると枚挙にいとまがないほどありますので、ここでは良くある事例をお伝えさせていただきます。
・ボタンや裏地の「持込」の場合やオプションを使用する場合
・腰ポケットにチェンジポケットを付ける場合や、*フラップの巾を変更*、角度をスラント(斜め)にする場合。*角度に関しては、記載がない場合は水平になります。
・ボタン付けを、「クロス付け」や「イカリ付け」などにする場合。*通常は「ニの字」です。
・内ポケットの無しの指示や、*口幅や深さを変更*する場合。
・*角台場*や*丸台場*仕様にする場合。
・第一ボタン位置を*N点から◯cm*と指示する場合。*上下(+2cm)の指示は無料。
* *で括られている指示は割増工賃対象です。
まとめ
はい、今回も当初の予定のスラックス~ベスト編まで入れませんでした。
しかし、今回はオーダーにおける非常に重要な”体型補正”がありましたので、こちらに文面を割きました。体型については1個1個を理解するとともに、複合型(例: 撫肩+N点上げるや、怒肩と突取など)もございますので、確かな技術と経験が必要になってくるのです。また、当然やってはいけないこととして、過度な補正や逆補正を入れることは、余計に着心地を悪くしてしまったり、変なシワが入ってしまったりしてしまいますので注意が必要です。
次回の「その4」にてこのシリーズも完結致しますので、乞うご期待です。
その他、メンズスーツやレディーススーツ、ドレスシャツ、ジャージースーツ、コートなどの縫製サービスについてのお問い合わせは株式会社ヤマモト縫製部まで、お気軽にお問い合わせください。