毎度!GXblog編集部の山佑です。
さて、いよいよ今回で、”オーダーシート記入方法シリーズ”も最終回の4回目となります。1、2回で終わらせる予定だったのですが、書いているうちに、あれもこれも、と内容が膨らんでいってしまいました汗
それも今回で完結です。今回は、オーダーシート記入方法の「スラックス編」と「ベスト編」をお届けしたいと思います。
目次
スラックス(トラウザーズ)編
まずはジャケット編と同様、スラックスのオーダーシート部分を拡大したものが、下記となります。
こちらを、これもジャケット編同様、4つのブロックに分けて、ご説明していきたいと思います。
①_スタイル・仕様(スラックス)
①に関しましては、選択をしていただく項目となりまして、
・タック:
ノータック(0)~ツータック(2)までお選びいただけ、タックを付けられる場合は「イン」と「アウト」タック、どちらも選択可能です。通常はアウトタックなので、インタックにされたい場合は、タック数の横の空欄に、”インタック”とご記入ください。
・脇P:
スラックスの脇のポケットになりまして、縫い目線に沿った、タテポケットと、少し角度がついているナナメポケットがお選びいただけます。ナナメポケットのほうが手が入れやすいですが、フォーマルシーンにおいてはタテポケットをオススメします。
・裾口:
S=シングル、W=ダブルでございまして、シングルでは前と後ろで5mm、5mmの差寸(合計1cm)を設けた”モーニング(モーニングカット)”か、真っ直ぐの”直(ストレート)”のどちらかを選択してください。また、ダブルの場合はダブル巾(カブラ巾)をご指定いただけます。現在は少し太くなっており、ダブル巾4.5cmのオーダーが多いような気がします。
・ループ:
こちらはベルトループのことで、ループを付ける際に”下り(さがり)”を入れたい場合は何cmか、ループ巾は何cmか、ループ長さは何cmか、のご指定をいただけます。なお、GXパターンは「下り 0cm、巾 1cm、長さ5cm」が標準となっておりますので、そちらで良ければ、こちらは未記入で構いません。また、ループ本数は基本仕様が8本でございますが、6本の指示をしていただいたり、下前のセンターラインから5cm程度内側に、ベルトが落ちないように補助ループを付けることも可能です。そして最近では、クラシック回帰も相まって、ベルトループ無しで、*サスペンダーボタン*を付けられたり、*サイド尾錠*を付けられたりするお客様も多くなっている気がしますね。左記の要な場合では、ループの箇所を横線で消していただき、備考欄にその旨をご記載ください。
**で括られている指示は割増工賃対象です。
・後P:
後ろポケット、いわゆる「ピスP(ピー)」のことで、”並”は左のみボタン留め、”フタ”はフラップ付き、”左右釦留め”はその名の通り左右にボタンが付きます。なお、玉縁は両玉縁が基本仕様となっておりますので、片玉縁をご希望される場合は、その旨の記載を備考欄にしていただければと思います。
・前立:
“ファスナー”が”釦”をお選びいただけます。釦につきましては、前立ボタンと言う場合や、ボタンフライという方もいらっしゃいますね。なお、ボタンフライは割増工賃対象仕様です。
・ドル入:
ドル入れポケットの有無を指示する項目です。”ファスナー付”はドル入れのフタの所にファスナーが付いて、フタを開け閉めできるようになります。なお、こちらも割増対象です。
・ステッチ:
脇の縫い目線にステッチを入れる/入れないのご指示がいただけます。入れる場合は”ミシン”か”AMF”(有料)からお選びいただけます。こちらは、「相引きステッチ」と言ったりもしますね。
②_寸法(スラックス)
こちらもジャケット同様、使用パターンと寸法を記入いただきます。スラックスのサイズ表も6体型X16号で96サイズからお選びいただけます。下記はそのうちの一つである「Y体」のサイズ表です。
こちらもジャケット同様で、寸法変化に対しての限界値があるため、より変化が少ないパターンを選定していただくことが、きれいなスラックスを作成する方法だと考えます。こちらもタテの変化は基本規定はありませんが、ウエスト±5.0cm、ワタリ±1.0cmの限界値がございます。特に、ワタリが非常に重要で、プラスマイナスが1cmまでしか出来ませんので、体型(腰囲や尻囲)から、近いものを選定し、そこでワタリをチェックし、変化の範囲内かどうかを見る必要があります。もし、はまらない場合は、号数を前後するや体型を変えてみる、などして合わせていってください。また、膝幅や裾幅は基本フリーとなっておりますので、「ワタリが重要」と言った意味がお分かりになると思います。
③_体型補正(スラックス)
スラックスにも、ジャケットほどではありませんが様々な体型補正があり、それと付随して限界値が設定されております。上記がその表になります。こちらも簡単ではございますが、1個1個説明させていただきます。
・出尻:
デッチリと言います。字のごとく、お尻が出ている方で、後身上部から前身下に向かって、斜めにシワが出てしまいます。
・平尻:
ヒラジリ。出尻の逆で、お尻が平たい方で、前身上部から後身下に向かって、斜めにシワが出てしまいます。
・前腰:
マエコシ。これも字のごとく前に腰が出ている方で、前身上部から後身下に向かって、斜めジワと尻下に横ジワが出てしまいます。
・出腹:
デッパラ。脇から見た時に、前部分の腹の出方が前に突き出して方です。
・ライン逃:
前身頃中心線が外側へ逃げてしまう現象で、いわゆるO脚の方ですね。
・前股上:
前身頃前カン付け位置の股上の深さの上下のことです。
・尻グリ:
尻縫い目カーブ部分を深くする補正です。
・後渡巾:
ウシロワタリハバ。足の細い人に使用することが多く、マイナス指定がほとんどの補正です。
・前身巾:
運動している人に使用することが多く、プラス指定がほとんどの補正です。
スラックスも上記補正を理解すると同時に、「ここまでしか出来ない」という限界値も合わせて覚えておくと良いかもしれないですね。
④_備考欄(スラックス)
まず備考欄に選択項目がございます。それは”腰裏のカラー”です。GXは中身までこだわっており(詳しくは過去のブログ「GXスーツは中身まで豪華!!!」をご一読いただければ)、腰裏は綿100%の杉綾の生地を使用したオリジナルのものを使用しております。こちらのお色を3色からお選びいただけます。
次は、縫製工場ジェンツならではの項目でございますが、腰裏の下に”ボタン”の表記があると思います。ジェンツはジャケットとベストを福島工場、スラックスは春日部(埼玉県)工場で縫製しているため、オーダーシートが分かれます。そのためジャケットでご指定いただいているボタンでも、スラックスの備考欄にその記載がないと、別のボタンが付いてしまいます。(こちらでは特にボタンの指定がないと、表生地同色のボタンが付きます)
ですので、ご面倒かと存じますが、スラックスにもボタンの記載をお願いしております。
その他の備考欄に記載が多い事例としましては、割増工賃(オプション)の仕様をご指示頂く場合がほとんどですが、
・*ベルトピンループを付ける*。
・*サイド尾錠を付ける*。(上記の「ループ」の項目で出ました)
・*サスペンダーボタンを付ける*。(上記の「ループ」の項目で出ました)
・三角の持ち出しを付ける。(通常は持ち出し無しです)
・裾口をダブルにした場合に、留め方を「糸留め」にする。*通常はスナップ留めになります。
・股擦れが起こりやすい方なので、*尻シック大*を付ける。
* *で括られている指示は割増工賃対象です。
ベスト(ウエストコート)編
さて、いよいよとなりますが、最後のベスト編に突入します。それでは早速見ていきましょう。まずは、下記がベストの部分の拡大したものです。ジャケットやスラックスに比べるとだいぶコンパクトになっていますね。
そして今まで通り、4つのブロックでご説明していきます。
①_スタイル・仕様(ベスト)
型:
シングル。ダブルをお選びいただけ、どちらかに◯を付けていただき、シングルの場合は、5X5(5釦 5掛)と6X5(6釦 5掛)の2タイプから、ダブルですと6X3(6釦 3掛)の1タイプよりお選びください。また、シングル6X5にはノッチラペルを、ダブル6X3にはピークドラペルを付けることも出来ますので、その際は備考欄にその旨をご記載ください。また、ダブルにはショールカラーも選択可能でございますので、クラシックな装いがお好みの方は是非ご利用いただければと存じます。*なおショールカラーの場合は、裾形状が他のダブルのスクエアではなく、シングルベストのように先が剣のようになっております。
ポケット:
腰ポケットのみの”2″か、胸ポケットも付ける”4″かを選択ください。なお、通常は「箱ポケット」が付きますが、フラップ付きをご希望の場合は、こちらも備考欄に「腰ポケット、フラップ付き」とご指示ください。
尾錠:
背中の尾錠の有無をご指示ください。なお、こちらの尾錠は、このGXパターンを開発された柴山登光先生の御用達の尾錠で、ベストにはこれを付けると良いよとおすすめいただきましたものになります。少し丸みがあるシャープな尾錠となっております。
ステッチ:
ジャケット、スラックス同様、ステッチの有無と種類、そしてステッチを入れられる場合の巾をご指定いただけます。また、スリーピース(三揃え)で作成される場合に、ジャケットにAMFステッチを入れたら、ベストにも入れるのが一般的ではございます。
②_寸法(ベスト)
記入する箇所は、たった2箇所なんです笑
後丈(着丈)と半胴になります。ベストもジャケット、スラックスと同様に6体型16号の93サイズよりお選びいただけます。
・後丈: こちらは「ベルトの下2cm」くらいが目安寸法となります。
・半胴: ジャケット編でお伝えさせていただきましたが、ジャケット半胴はハナからで、上がり寸プラス1.5cmでしたが、ベストは1.3cmを足した寸法がベスト半胴となります。また、こちらの補正限界値はジャケットと同様で、脇で2.0cm、打合で1.5cmの出し詰め(プラスマイナス)が可能でございます。
③_体型補正(ベスト)
③の箇所を見ていただくとわかると思いますが、ほとんどジャケットと同じ補正内容&限界値です。ベスト特有の補正としましては、
・前ダーツ:
ジャケットで言う、マニプレーションと同義で、前ダーツを深くする補正となります。こちらはプラス1.0cmまでが限界値となります。
また、オーダーシートには記載がないのですが、
・前グリの浮き:
胸が張っている方によくでる症状で、袖グリ部分が浮いてしまう場合に使用する補正もございます。*限界値1.0cm
④_備考欄(ベスト)
ベストの備考欄には、ボタンと裏地の記載をしてください。(スリーピースの場合も単品の場合も)
こちらは、工場でオペレータの方がこのオーダーシートをシステムに取り込む際に各項目を入力していくのですが、スリーピースの場合でもジャケットと違うボタンや裏地を付けられる場合もございますので、例え同じ場合でも、スムーズに、そして間違いなく入力できるようにそれぞれに記載いただくようお願いしております。
その他のベストの備考欄に記載されることが多い事例としましては、
・(上記の”型”でお伝えしました)*衿を付けられる*場合。
・背表を裏地ではなく、表地と共地にする場合。*その際は用尺注意で、プラス30cmしてください。
・ダブルの場合、内側の留めがスナップボタンで留めるのが通常仕様ですが、それをボタン(15mm=袖ボタンのサイズ)留めにする場合。
・第一ボタン位置を*N点から◯cm*と指示する場合。*ジャケット同様、上下(+2cm)の指示は無料。
* *で括られている指示は割増工賃対象です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。全4回にわたりお届けさせていただきましたオーダーシートの記入方法でございましたが、今まで窓口業務を行ってきた際にいただいたご質問やご不明点などの答えを織り交ぜながら書いていきました。こちらを読んでいただければ、ジェンツのオーダーシートはバッチリ!!とまでは難しいかもしれませんが、広範囲でカバーしているのではないかと思っております。
今後は、補正内容の深堀りや、その他のオーダー(ジャージーやシャツ、コートなど)におけるシートの記入方法など、様々な情報を発信していきますので、ご期待くださいませ。
その他、メンズスーツやレディーススーツ、ドレスシャツ、ジャージースーツ、コートなどの縫製サービスについてのお問い合わせは株式会社ヤマモト縫製部まで、お気軽にお問い合わせください。